朝の通勤途中に
真新しい制服を着た学生さん達とすれ違います。
ワンステップ上へスタートですね。
(教室の記録より)
高校の受験勉強のため、
昨年12月までで教室を後にした
K君のお母さんから電話がありました。
「もう教室を辞めた分際で、恐縮なんですが
息子が、習字を書きに教室へお邪魔したい
と言うんです。伺っても大丈夫でしょうか?」
お話によると、合格発表の日
あえなく彼の第一志望の桜は散ったとのこと。
少し不本意な進学を前に
ウチの教室に来たいと言う彼を
とても愛しく思えました。
「大歓迎ですよ。いつでもどうぞ!
と伝えてください。」
私は携帯に両手を添えて答えました。
夕方、教室に現れた彼は、薄い笑みを浮かべて
「こんばんは」と低い声で挨拶。
私も、「すこしだけ、お久しぶり~」と挨拶。
彼は姿勢を正して
何かを吹っ切ろうとしているようでした。
「今日は、大筆で思いっきり書こうか!」
私は、墨池にたっぷりの墨汁を入れ
ロール紙を準備。
墨の香りが、かすかに漂い
深呼吸をするKくん。
そのあと、彼の持つ筆が
真っ白な紙の上を悠々と走ります。
「やっぱ、上手いな!」
と、感心する私。
頭を掻きながら照れるK君。
帰る時間が迫る中
毎度のご褒美オヤツを頬張りながら
相変わらずのボソボソおしゃべり。
「うんうん。心配せんでいいよ。大丈夫よ。
ストレス発散しに、いつでもおいでね。」
と言うと、彼は無言でうなづき
深々とお辞儀をして帰っていきました。
墨の香りは、心を落ち着かせる効果もあるそうです。
小学1年生頃からの付き合い。
いつも多くを語らない男の子だったけれど
ちゃんと心は通じてたこと
とても嬉しく思いました。
第二志望の学校でも
きっと輝いてくれると思います。
君の未来は無限大だよ!